映画音楽の役割を再認識させた傑作
ブレードランナー、、マニアなファンはブレランなどと略して呼んだりする。
昔、SNSでこの映画のコミュニティサイトに入ったら、その内容があまりに濃くて熱いのでボーッと眺めるだけだった気がする。
ビデオBGMの仕事に関わっていた頃、プロデューサーの方からこの他ではみられない作品の要素として「無駄と言われるコマが全くない」ということを聞いた。
最初この映画に触れたのは、オンボロだった頃の池袋・文芸座で「時計仕掛けのオレンジ」との2本立だった。
余談ながら、僕がこれを視ていた時、その後(ライブやイベントの仕事で)ご一緒することになるバイオリニストの太田恵資さんが映画館の前で、入るかどうか迷って立っていた、という偶然のエピソードがある。
ブレードランナー・サウンドトラック
ヴァンゲリスの特長としては、その独特な広さを持つサウンド、そして分かりやすい主旋律にある。
サウンドは聴いてそれとすぐ分かる音色であり、あの音価を長くとったシンセサイザーのサウンドの要はおそらく全てではないものの、Roland社のシンセから発信されているものだ。僕も同社の音源を持っているが、ほぼ同じイメージを音を聴くことが出来る。
これをオリジナルやライブで使うことには、流石に抵抗があるのだけれど、その誘惑の強さと言ったらない。
推測ばかりで申し訳ないのだが、昔のヴァンゲリスの(もしかしたら最近のものでも)JUPITER系のシンセを使用していたと思われる。古くはJUPITER-4、新しい方ではJUPITER-8、その辺だろうか。
この「4」を見かけることはまずないが、遠い昔、池袋の音楽スタジオにはこれがオプション扱いで置いており、弾いてことがある。
そしてこの出音が、ヴァンゲリスと全く同じ音が出たので驚いた憶えがある。
ブレードランナーは映画とビデオで5回は繰返し視聴しているが、飽きっぽい自分としては実に珍しいと思う。
それは出だしの、あの街全景からタイレル社が出現する冒頭の映像とサウンドをもう一度確認したいから、、という理由があるから。
それだけこの導入部には、今もって充分な魅力がある。受け手の心をあっという間にオーバーフローさせるだけの圧倒的な質感を持つシーンだと思う。
映画と音楽の重なりは、作品内容に於いて相当な比重を持つものだろうけれど、それにしても寒いものも多い。
本作のように、本編と音楽がここまで同化しているのは珍しいケースだ。
というか、逆に音楽(サウンド)が主で映画がPVみたいにその下に(悪い意味ではなくて)入っている部分もあるように感じられる。
例えば、ビルの合間をゆっくりと空間移動する未来の宣伝カー?ビルの側面には「強力ワカモト」と表示(この映画には和的センスが散見される)されている。
その音楽というよりサウンドと言ったら良いのか、その絵と音の何とも魅力的な重なり。音楽だけを取り出してみると、実はラストテーマで使用されている音楽などは、スレスレで野暮ったくなるところを回避しているようなところがあって、考えてもみればヴァンゲリスの他の映画音楽、炎のランナーや南極物語でも似たようなところはある。
そしてまた、この微妙に下世話で世俗的な旋律は、もしかする映像に自分の作品が入り込みやすくするための潤滑剤みたいな役割を果たしているのかも知れない。
この音楽に接していると(僕の場合、作曲作業の中心にはピアノがどっかりと腰を据えているわけだけれど)音の要素に付いて、もっと幅広い観点が必要ということに気付かされる。
さて6回目の視聴となるかどうか。時間に追われて映画を一本視るということがなかなか出来ませんが、何とか捩じ込みたいものです。
「ブレラン知らない」という人達は、是非この連休中にブレラン教?に入信しましょう。底なしの未体験ゾーンに突入すれば、近未来の旅が待っています。まずは"CDで肩ならし"も良いでしょう。自信をもってオススメします。