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東京を代表するプログレユニットFLAT1-22のピアニスト・川崎隆男が力筆?するCD評です。


Phew、パンクニューウェーブの職人

テクニックを笑い、一蹴するそのカリスマ性


Phewを聴いたのは、おそらく坂本龍一さんがDJをしていたサウンドストリートだと思う。「このヴォーカル、一体どうした?」それが第一印象。

好き・嫌いがハッキリ、クッキリ!そういう音楽です。

また、誰が聴いても同じ印象を持つはずで、結果として「受け入れる」か「こういうのはダメ」と拒否反応が出るかだけだと思います。
ニューワールドは最新作になるが、僕個人の意見としては、Phewの場合、作品が新しいほど音楽が洗練されて共感出来るという気がする。ホルガーシューカイ辺りとやっていた旧作も、それはそれで捨て難い魅力があるのだけれど。

僕は、今でもテクニックを信じているし、テクニックのない音楽は好まない。
底意地の悪い年寄具合は救い様がないけれど、弛まない技術の習得と研究が底力となるのだと信じて疑わない。
しかし、、、、このPhewという何ともキワモノ的(あくまでも「」です)な悪魔のような歌を聴くと「変拍子」で地固めし「モード奏法」で幾重にも防御を固め「ポリリズム」で外堀を埋め尽くした"真田丸"とタメを張る?我が城も決壊しそうになる。

聴いていて吸い込まれてしまうのだから仕方ない。ここは素直にこの変態な世界に誘われるしかないのだろう。こういう音楽だがライブもまた凄い。執念深く何度も繰り返されるリフの抑揚、その根底には一体何が在ってのことなのか。怖いもの見たさで入るお化け屋敷(失礼)みたいなイメージを感じる。
数十年ぶりに聴いた彼女の音楽は、更に研ぎ澄まされ、槍の先は輝きを増している。そしてこのサウンド。恐ろしく面白い。Phewの音楽(というより「世界」と言った方が良いか)を築くパワーと先鋭的なサウンドとの融合は、新しい音楽を渇望する音楽ファンの期待に十分応えるものだ。

それにしても、不思議な音痴具合は相変らずぶっ飛んでいる。
これは希有な才能といって良いかも知れない。
この歌い方、音程の取り方は、作為的なものなのだろうか?

オリジナルに溶け込ませることを意識してこのようにアプローチしているのだとしたら驚きだけれど。
この音楽を聴いて、最初から拒絶反応で針を上げる人も少なくないかも知れない。しかし、吸い込まれてしまう僕のような「変態君」もいるのだ。電車と一体化する会社員、出前バイクと同化する蕎麦屋の店員、ヘルメットが身体要素となる建設現場の親方、人車一体バスの運転手、こういった地球人が自宅で聴く音楽、それが「Phew」かも知れないのだ。

Phewはある意味、教祖みたいな存在である。
音楽教なので、お布施はCD購入代となる。音楽教は信者以外から見れば、悪魔のようだったり、えらく下品な弁天様に見えるかも知れない。神様のような存在なので#系音痴という完治不能な病気であっても笑って許される。許されるどころか、それが気持ち良いとさえ感じているマニアも水面下では多数存在する。

しかし何度も言うが、吸い込まれた信者とっては何ものにも変え難い"音"と"言葉の魔力"があるのだ。子供、学生、大人、お年寄り、そして音楽好きの宇宙人まで。

この変態音楽に触れていただき、感想を伝えて欲しいと思う。面白音楽はコメントもまた面白いものだ。
こういった表層的ではない、本当の意味での「個性」を持つヴォーカリストが知られるようになって欲しいと願うものです。彼女はこの芸風を、おそらく30年は(もっとか)変えることなく追求してきたわけです。

これはもはや、職人さんの域でしょう。しかしその音楽内容には幾重にも渡る試行錯誤の痕跡が認められます。

職人は立ち止まらない。

心よりPhewを応援したいと思います。

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