ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

GoGo Penguin / 最近のピアノ音楽事情

GoGo Penguinはピアノトリオです。

V2.0

新しいジャズピアノトリオ等とネット検索すると出現率の高いバンドです。

本作は何やらソフトのバージョンのようなタイトルが付いております。

自分の勝手な思い込みで米国のユニットと思い込んでおりましたが、イギリスはマンチェスター出身となります。

そういうわけでもないのだろうけれど、音楽の色彩が少しダーク。陰影に富んでおります。そういう少し物憂い色調を好む向きはハマる可能性があります。

このバンドをジャズの括りということを持ち出すのはあまり意味がないでしょう。惜しくも不慮の事故で亡くなられたピアニスト「エスビョルン・スベンソン」の率いる「E.S.T」であればジャズの端っこくらいには入りそうですが、、でもあれでも大分違うところがあります。

僕は、この種のピアノユニットが出現して来たのは"自然発生的"なことだと思います。こういったタイプのバンドは他にも少なくないので、いずれ何か括りとしての言葉が生まれそうな気もします。

E.S.T、それからベースレスのサックストリオであるMAMMAL HANDSも同じ系統と言っていいか。勿論、音楽内容としては違うが、根っこのところでの大切な要素、そのいくつかに近似性がある。

自分としては、こういった中でこの本作を演奏するGoGo Penguinが一番好きかも知れない。

そしてそのリリースしたアルバムの中ではこのv2.0が聴いていて気になるところなくスーッと心に入って来る。他作品ではベースのピッチに違和感を感じたり、ハーモニーの取り方に疑問を持つところがあったりと、すんなり入り込めないところがあったのだけれど、本作はOK。また2016年リリースの「MAN MADE OBJECT」と比較しても、力が抜けており、飄々としたサウンドでうるさく感じない。

リズムに工夫があり、ドラムンベースやラテン的なフレーズを入れるところがあるが、そのセンス自体はとても好ましいが、時としてガシャガシャとして雑然となる傾向があると思う。その点、この作品は不思議にスッキリしているように(個人的には)感じられる。録音の状態(使用したスタジオ、エンジニアのセンス、収録時のメンバーの調子)にもよるのかも知れない。

このバンドの強みはその作品力にある。演奏も決して下手ではないが、聴いてすぐにこのバンドと気が付く強みがある。

これは最も大きなポイントと言ってい良い。

ジャンルもバンドも関係なく、たとえクラシックのオーケストラでも、聴いてすぐに"アレ"と分かる事ほど得難いものはないのだ。

音楽ファンが聴いて、勘違いして他バンドとごっちゃにされては音楽家も考えた方がいいだろうし。演奏は作品の下に位置するのだ。いくら優れた演奏力を持っていたとしても作品に力なければ、その演奏は力が在るだけに押し付けがましいだけの雑音にしかならないだろう。

既存のスタイルのかき集め、、音ネタのまま自分の中で咀嚼し吸収出来ないまま差し出された音楽ほど、聴く者にとって迷惑なものはない。

さて、、またまた脱線してしまいました。(@д@)/

このバンドはこれからが問題だと思う。スタイルはしっかりあるが、作品をただ連発していくだけではこのテイストでは飽きられてしまうかもしれない。それも意外に早いうちに。「たまに聴いてもらえばOK」とメンバーが考えているのであれば、それでもいいが彼らの若さから想像するとそうは考えていないだろう。ドラムの工夫から比較するとピアノとベースの工夫が少し足りていない感もある。この辺を慎重かつ大胆なアプローチで乗り切って行ければ、まだ先はありそうだ。

日本国内でも既にハマっている音楽ファンが少なくない。

やはり新しい音楽を渇望しているファンは多いのである。僕も音楽家の端くれだが、愛だ、恋だ、というソングもいいけれど、こうした演奏音楽にも耳を傾けて欲しいと願う。そういった音楽は言葉では到底表現の難しいささやかながら"美しいイメージ"があるのだから。