ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

UAと草間弥生が何故か重なる/ATTA

UA/ATTA

UAは最初に聴いた時、僕の鈍過ぎる耳が反応した珍しい存在だ。先にお断りしておくと川崎タカヲというと、変拍子と現代音楽とポリリズムをバカみたいにコネクリ回して客からも周囲の音楽家からも愛想を尽かされる(笑)というイメージを持っている方がいらっしゃると思う。しかしそれは大変な誤解だ(と思う)。

僕は、J-POPも場合によっては大変好むのである。場合によっては。

昔の歌謡曲奥村チヨ朱里エイコ前野曜子、先にご紹介したトワエモアからちあきなおみ、そして荒井由美から、段々マニアックとなりPhewと来て本作のUAとなる。

楽器を演奏する所謂"演奏家"の作る音楽には自作を含めて面倒で気難しい考えを持っているのは確かだ。よって人と上手くやっていくことに難儀するし、自分もまたそれ以上に傷つくことが多い。しかし、、!

ヴォーカル/シンガーソングライターは別となる。

ヴォーカルには楽器奏者とは次元の違うところが多々あり、上手い下手という実につまらない物差しの必要を感じない、、そりゃ音痴っていうのは困ります、、否!それでも音痴のように歌う"Phew"もいるから(笑)それもまた一刀両断には否定できない。

 

UAは決して特別に歌い手さんとして傑出しているわけではないと思う。

むしろ無骨で、どこか野暮ったく、不器用そうな印象がある。

しかし、ヴォーカルにはそれが逆に作用し、飛び抜けたキャラとなるのだ。

僕は、UAの歌う曲であれば、どれでもOK。ロックから、童謡までこの人なりに驚くべき自由なアプローチで声にする。

サウンド構築に絡む裏方面子もまたそれに呼応するようにこれでもか!!とばかりに腕を振るっている。その入込み具合が尋常ではなく、ここで僕が敢えてケチを付けるとすれば、音をぶっ込み過ぎて何か飽和している感じがあることだろうか。ドラムのアプローチひとつとっても「やり切ってます」という感じで、黎明期のリズムマシンであるRoland/TR606から生ドラムまで作品に合わせたリズムアプローチ、スプリングリバーブを使っています!と分かるようにビョーンと敢えて目立つように使う。UAと音楽を造り上げるスタッフもまた自由な精神をお持ちのようだ。

個人的見解としては、もう少し曲数を削り大体10曲前後として、その余裕の出た時間を、各作品に飄々とした「微風のようなデティール」を注入したら良かったように思う。

あまりに完全にやり尽くしたところが、僕にはお腹いっぱいになり過ぎて、少々聴き疲れしてしまうのが残念なところだ。

しかしながら、たまにチョイ聴きする僕とは違う、生粋の熱いファンであれば、このくらいの押し出しが調度良いのかも知れない。

日頃、ECMの浮遊感だとか、立体の中に音を鏤めるとか、そんなことばかり考えている年寄りには、良薬なのかも知れないが。

ということで、僕はこのアルバムだったら畳の上にコロンと置いたポータブルラジオ、カセットテレコで低めの音量で流し、自分は読書とか、こうして文字入力をしているとか、そういうスタンスが程よいか、と思う。

で、時に気になる曲で、少し自分のやることを停めて耳を傾けるような。

UAみたいな感じのシンガーは兼ねてより少なくない。しかしそれは似て非なるものだ。どんどん終わって消え去って行く。しかしUAは大地に足をドーンと付けて驀進して行く。ブレの無い女性アーティストというのは音楽のみならずカッコいい。

昨日TVに出ていた草間弥生さんとダブって来る。