ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

いぶし銀的な存在「マジカル・ミステリー・ツアー」

作品力で勝負ならビートルズの中でもベスト3に入るか?

アルバムが単に良き作品の集合体であるというなら、このアルバムは間違いなくビートルズの中にあっても上位にランクされると僕は思う。ポールの作品に偏っているものの、例えばビートルズ全体の作品群の中において特異性の高いものとして僕は2曲あげる。そのひとつはリボルバーの「Tomorrow never knows」そして本作の「I Am the Walrus」となる。勿論、個人的見解です。
ビートルズは風変わりな曲が少なくないから記憶の糸を辿るとまだまだ出て来るかも知れません。
この「I Am the Walrus」はジョンの作品ですが、凄いことになっております!そのサウンド、SE(サウンドエファクツ・つまりは効果音)の使い方、世界観、独特な旋律とビートルズならではの独特な引きずったような重さを持って聴く人を引きづり込みます。
そう言えば、先頃ご紹介したUAのアルバムにもこの辺りに影響された曲がありました。ビートルズからネタを頂戴するバンドは実に多いですが、意外にこのビートルズの中では外側に置かれているナンバーから持って来る場合が確認されます。
ストレートに美しいとか、軽快で聴きやすいというのではないので、ビルボードランキングも13位までしか上がらなかったという記憶があります。(その後の上下は分かりませんので、朧げな情報です。)
ビートルズにしては惨敗でしょうけれど、流石の熱きビートルズファンも当時この斬新なサウンドは敷居が高かったのでしょう。
僕は、今もってこの曲の表現力を尊敬しております。
これが在るだけで、本アルバムのランクはずっと上がります。
調べてみますと後年ポールはこの曲をジョンの最高傑作と評したそうです。

「泣けてきます!!」

ジョンにとってポールは最大の理解者だった?としみじみとしてしまいます。
しかしこれだけではない。佳作とも言えるイメージですが、聴けば驚くべき美しさを持つ(これぞポールの真骨頂と言える)「Your Mother Should Know」が脇を固めており、このアルバムの恐ろしい程の作品力を垣間みるところではあります。
この曲はとにかく素晴らしいラインを描いております。実際ポールには拘りが強かったのでしょう、丸一日かけた収録をボツにしたくらいだったそうです。
僕もよく作品の改訂でメンバーから顰蹙をかいますが、いやいやビートルズとは比較にならないですね。もっと見習いたいと思いますが、しかしそこには他メンバーの理解と忍耐が必要なのです。
ビートルズのリハーサルを映したビデオを見ると、皆疲れ果てて目がどんよりして独特の表情です。ジョンが、ビートルズの再結成を聞かれて「実はやりたいとは思っているんだ。でも、今の自分にあの24時間音楽漬けという生活が出来るだろうか?」という内容をインタビューで伝えておりました。
確か「ダブルファンタジー」リリースの直前だったと思いますが、もしかするとこのアルバム後、再結成が実現したのかも知れません。残念なことです。
このアルバムに聴き手が入り込んで行く導線としての役割は「Hello, Goodbye」と思うのです。実は、以前やっていたユニットで、この作品のギターのカウンターラインのようなイメージで演奏して欲しいと伝えたことがあります。あまりにもシンプルな「ドレミファソラシド」という(それだけではないですが、、。)フレーズですが、主旋律を押し上げる考えられたラインです。
しかし、この曲をよく知っていることが前提となるこの指示は理解されなかったと感じました。流石のビートルズでも世代によって聴く方は少なくなる、ということらしい。そして忘れてはいけない「Blue Jay Way」、ジョージがタダモノではないことが良くわかるプログレッシブです。ビートルズって僕の中では立派なプログレバンドなのですが、その理由(要因)がこの曲にも横たわっております。この不思議具合、浮遊感、他のバンドでは絶対に真似出来ない部分でしょう。

流石のビートルズでも世代によって聴く方は少なくなって来ます。
もし、音楽ファンにビートルズでオススメアルバムを聞かれたら、もしかすると本作を進めるかも知れません。
作品それぞれの出来が粒ぞろいで、しかもビートルズの中では後期にあたりますので、それほどの古さを感じないはずです。
本作と「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」は近似性がありますので、どうしても代表的アルバムの影で目立たない可哀想なところがあるような気がします。
しかし、その音楽内容はタメを張っております。是非、ご注目のほど!!