ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

チョン・キョンファを聴く今年後半か?

バイオリンと同化しているらしい!!!

20歳そこそこだった。友人の「T」に教えられたバイオリニストがこのお方。この「T」ってのは前にパユのことを書いたページで登場したフルーティストだが、バイオリンにも詳しかった。

自分の女神のようにこの豪腕バイオリニストを崇めておりました。彼の聴いていたのはプロコフィエフでしたが、確かにあれも凄かった。一体何が、彼女の宇宙人的(楽器に長けた宇宙人って?)なところか、と言えば「テクニック」に他ならない。何かに付けて「テクニックより大切なことは山ほどある」と宣っている自分ですが、この天才(という言い方は失礼なのかも知れない、、それにしても。)の演奏を聴くとそんな言葉は瞬時に色褪せてしまう。
本作に入っているバイオリン協奏曲4点は、クラシックファンなら「知ったかぶり」以外は皆知っている"クラシックのイロハ"みたいな作品達である。

この中の、チャイコフスキーとメンデルスゾーンは自分の原音楽と言えるものだ。遠い昔、エンゼルレコードのマークが入った赤く透き通ったレコードから聴こえてきたのはこの2曲であり、バイオリニストはオイストラフだったと思う。父が少しだけ出生して作業員長屋から職員アパートに引っ越した直後だから4歳ということか。それからというもの、小学校低学年辺りまでBGM代わり、とても身近な音楽だった。

そういうことで、年齢を重ねて行くに連れて、聴く気力を振り絞るのが難しいという悲しい事態となってしまった。比較すればベートーベンとシベリウスはまだ少し新鮮味があるだろうか。しかし、この原音楽というのは心の奥底に常に巣食っていて、自分の音楽にも時折口出しをする。子供時分に耳に入った音は何にもまして影響が大きいのである。

そういう馴れ切った筈の本作品だったのだが、Youtubeでふと目にとまって見た(聴いた)チョン・キョンファのチャイコは驚きのあまり涙がザーザーと出て来て止まらなくなり、仕方ないので途中で止めた。ブックマークして後で改めて聴くと、やはりとてつもなく感動して涙腺があっけなく決壊してしまうので困ってしまう。

その不可思議な感動は何処から来るのだろうか?
それは音を掴み取る力を感じるから。バイオリンを自分の言葉のように同化して使える、つまり人間離れした自分の想定外の世界に引き入れられたから。ライブ動画を見ると、パート毎に身体の向き、位置を激しく変えて作品のリズムを感じ取ろうとしているように見える。そういう雰囲気的なところ、ライブ特有の粗いところは、むしろ彼女の魅力を倍加させる。ジャンルに関係なくスタジオ収録を好むアーティストも少なくないが、彼女はどうだろう?本人に聴いてみたいものだ。

さてこのアルバムは2枚組で前述の通り、有名過ぎる4点が入っている。だが、クラシック「バイオリン部門」登竜門としてこれほどの打ってつけもないだろう、と思う。
指揮者・オーケストラも興味深い取り合わせであり、特にプレヴィン+ロンドン交響楽団は評価が高い。シベリウスのバイオリン協奏曲はオケとバイオリンのバランスを変革しようとした意欲作でもあるので、バイオリニストにとって「とてつもない難曲」ではあるが、それと同程度にオケとのバランス。それを司る指揮者の役割は更に大きい。そういったバイオリンとオーケストラのバランスの妙とでも言うのか、その辺に耳を傾けるとより楽しく聴けるかも知れない。この中で最も分かりやすいのはメンデルスゾーン(音大生・ファンはメンコンと言ったりする)ということで"OK"だと思う。技術的にも最も敷居が低い、、ということはバイオリニストからよく聞く話ではある。しかし、作品の難易度というのは音楽を計る要素としては何の役にも立たない。音楽は旋律とリズム、ハーモニーが心に触れることが大切であって、だからこそこのメンコンは名曲と言われるのであります。実際、旋律をあぶり出すと、他3作品と全く遜色ないどころか、美しいラインを描くことにかけては突出しております。クラシック界のメロディメーカーと言えば僕はメンデルスゾーンとチャイコフスキーだと思っているが、その面目躍如たるところがあると思う。更に深堀すべく鬼聴きするとこの4作品中、このバイオリニストが最も得意とするのはチャイコフスキー「バイオリン協奏曲/ニ長調」ではないかと感じるのですが、如何でしょうか。この作品は、他演奏家ですと「ダブルストップ」や「素早い三連符」ユニゾン等でピッチが悪く聴いていられなくなることが多いですが、流石です。猛然と弾き倒しております。ちびっ子の頃からレゴ組立のBGM(笑)として聴いて来たこの作品ですが、まるで聴いたことの無い新しい音楽の様に錯覚してしまいます。今年、夏が終わって秋冬となると僕もライブが始まります。そんな時、これを聴いて自分にを入れたいものです。今年の夏休み中はクラシック音楽に挑戦!(と言うほど大袈裟ではないけれど。)という音楽ファンは、どうぞお試しあれ。