ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

ハービーハンコック/芸風のデカさに頭が下がります。

フュージョンの辿り着いた楽園。

このページの音楽評はハービーハンコック/MR.ハンズとなります。「チックコリア評を2作品取り上げておいて、ハービーハンコックを取り上げないというのは片手落ちじゃないの?」と言われそうです。慌て加減で選びましたアルバムは、思い出深い1枚となりました。昔は、この天才的なピアニスト・キーボーディストが興味の対象でした。それがピークに達していいたのが25歳、某ジャズスクールで理論とかジャズピアノを学んでいた頃だ。アンサンブルクラスという、バンド単位で演奏スキルを付けるというコースが用意されておりました。この発表会にあたり僕の我が儘で、本作から「Just Around the Cornerというのを練習して何とか形にした憶えがある。あの時のバンドメンバー(というか生徒さん達)には無理をさせたなぁ、、と今でも申し訳ない気持ちです。本作に関してネットを浚ってみると、ひとつ興味深い評を書いていた方がおりまして、これはベーシストのためのアルバムだそうです。「キーボードがどうしたこうした」という要素は、、全く聴こえて来ないと。ベーシストが聴くと、どうしてもベースに耳が行くアルバムということらしい。言われてみれば、ロン・カーター、ジャコ・パストゥリアス、ポール・ジャクソンと錚々たる顔ぶれ、しかも皆さん実に良き仕事ぶりです。
僕がこのアルバムに入れ込んだ理由は、しかしベーシスト云々ということではないのです。このアルバムの最後を飾る名曲「テクスチャーズ」がその理由だからです。何故か?それは本作がシンセベースであり、更に言えばこれはハービーひとりの多重録音であるからです。ドラムも彼が演奏しております。当時25歳の自分がどれだけ本作品に魅力を感じたか、文才ゼロの小生では表現が追いつかないです。音色の官能的なところ、旋律の艶かしさ、そしてこのベースラインに強く魅かれたに違いありません。この曲を探し当てるために3枚、4枚とハービーのアルバムを買ったものです。ラジオから流れて来た音を少し聴いただけだったので、曲名まで知ることはなかった。お陰で、彼の作品の多くを知るきっかけにもなりました。そしてこのアンサンブルクラスで演奏するために耳コピするために、貸レコード店から借りて来たところ、探していた曲、それも諦めかけていたところで、耳に届いた時の嬉しさはなかったです。久しぶりに聴くと本作は実にカラフルな色彩を帯びております。チックの作品造りとは対象的に、振り幅が大きく、口悪く言えば散らかった感じ、脈絡がない。しかし、その飛んでいるところがハービー・ハンコックたる所以であり、天才的なところでしょう。時折聴かせるソロの、アウト加減も、芸風が大きく、キレイに収めるチックとは趣が異なります。本アルバムの例えばオープニング「スプリング・プリズム」と前述しました「テクスチャーズ」の旋律、サウンドは彼の真骨頂とも言えるセンス満載です。他のアーティストでは到底辿り着くことの出来ない「音楽の楽園」みたいなものでしょう。ハービーの動向は今もって気になります。まだまだ老け込まないで欲しいと願います。