ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

これを個性と言う/ゲルニカ・改造への躍動(拡大版)

戸川純というなら、、僕の場合「玉姫様」よりはこちら?

最近、喉に小骨が刺さったように(この表現をネットで調べようとすると恐い病気の話ばかりとなる、、笑)忘れられたバンドとその展開された世界。それが一体何だったのか?
遅い夕食(肉じゃが+ツミレ汁)をとりながら、このCD評に肝心なバンドが漏れていることにふと思い当たりました。その昔、戸川純は「ヤプーズ」というバンドをやっておりましたが、当時僕はのこのバンドの「玉姫様」ってアルバムを持っておりました。しかし、彼女のヴォーカルを楽しく聴くなら「ゲルニカ」ということになると思います。〈怒られないうちに書いておきますが、「ヤプーズ計画」は間違いなく名盤でありましょう。〉ゲルニカ戸川純と作曲・キーボード担当の上野耕路、プラスして歌詞・アートワークを担当していた太田螢一を加えた三人のユニットということになります。戸川純の個性で成り立っているところは確かにありますが、しかし、このユニットの最たる特長はその音楽内容そのものにあります。交響曲管弦楽、協奏曲といったクラシック音楽の特徴的な要素を数分の小さな尺に大袈裟な手法でぶち込むと。シンセのこれでもか!という程の「オーバーダビング」、裏方ながら"絶対的な存在感"際立つリズムボックスの組合せがサウンドの要です。おそらくは「Dr.リズム」辺りではないかと思われます。
「TR606」や、まして「TR808」ではこのようなチープ具合にはならない。リズムマシンはドラムに特化した自動演奏装置の事。作成者が任意にプログラムすることが出来る。Dr.リズムはRoland傘下のBOSSがリリースしたコンパクトなリズムマシン。長年、改良を続けて新しいモデルを送り出すが、ゲルニカが使ったのは勿論初期モデル、かなりの力技を使わないとこの音楽の成立は難しい。TR606・808はローランドがリリースしたリズムマシン、共に多方面で使われ特ににTR808は愛称を「ヤオヤ」と付けられアメリカのソウルシーン等でも活躍した。

それにしても、プロコフィエフからストラヴィンスキー、はたまたヨハン・ショトラウスまで登場するパロディとパロディのぶつかり合いで、凄い密度感のシンセサウンドに呆れる。しかし、それも電子的でもなく、MIDI的でもなく、どこか微笑ましい電気音楽なのである。しかし、こうしたクラシック調音楽全開(全て上野耕路が作曲したオリジナルとなる。)の上で、オペラ調で歌う戸川純のぶっ飛び具合がまた素晴らしい。これを憶えて歌うだけでも大変だったに違いない。これを聴いたのは随分昔になる。当時、ジャズスクールに一緒に通っていたN君と江古田の貸レコード店(死語)で借りたのがコレ。二人でゲラゲラ笑いながら聴いたのを憶えている。彼が聴いて欲しかった曲は「動力の姫」だが、実はなかなかの旋律を持つ「カフェ・ド・サヰコ」「曙」楽しさ満載の「潜水艦」、本当に登山しているような気分になる「夢の山嶽地帯」等、魅力は尽きない。また本作は初期のアルバム収録の作品が網羅されており、音質も2016年のリマスタリングにより質感が圧倒的に向上している。僕としては、あのチープだったガサガサした音こそゲルニカだと思うところがあるので、胸中は複雑なのでありますが。しかし、ゲルニカ初心者?(是非、頑張って聴いていただきたいです。)にはこちらのキレイな音の方がより入り込みやすく作品の機微が分かって楽しい気分になれるでしょう。この限界を突き抜けたような個性に入り込めるかどうか、それは聴き手の踏絵のようでもあり、音楽IQ(数値が高いから良いとは限らない)のメータとも言えるかも知れません。まあ、これを嫌いだ!と言っても全く問題ないと思います。「こんなの受け入れられない」ということもまた感動のひとつ。数多の音楽がこの世に在れど、ゲルニカほど白黒ハッキリ付けやすい音楽もそうないだろうと思います。余談になりますが、ゲルニカのライブは一度見た(聴いた)ことがあります。神保町の教育会館というところでしたが、確かチェロとピアノを中心としたシンプルな編成ながら、しっかりゲルニカを再現しておりました。戸川純上野耕路のMC、マニアな音楽と共に今でも印象に残っています。こうした音楽を生み出した背景にはやはり、¥(エン)レーベルを主宰した細野晴臣の存在が大きいでしょう。僕は国産音楽に限って言えば、この辺の時代が一番楽しかった。また違った形で自分の想像を超える音楽の波が来ることを願っております。更に脱線しますと、戸川純が影響を受けたアーティストとしては「Phew」ということになるそうです。なるほど、少し上ずった感じの音程の取り方等に影響が見受けられます。しかし、戸川純Phewほどには音痴にはなれない。そこに決定的な違いがあります。でも、音痴になれないから駄目!!、というのでは可哀想ですよね(笑)このレーベルで他に聴いていたのは「インテリア」や「立花ハジメ」です。今も現行型の音楽として十分に応えてくれます。否、、それどころかこちらの方がずっと面白いかも知れない。こちらも機会があったら是非♬