ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

STEPS/PARADOX「K子は今何処に、、、。」

演奏家に必要となる音楽性とは如何なるものか?教えてくれる!
今でもそうですが、僕の「面倒くさがり屋さん」は古来からの歴史がございます。自分のライブくらいならそこそこ真面目にやりますが、人様のライブに行くのが実にかったるい!
街の喧噪に揉まれ、帰宅が夜遅くになるのも好まない。
そんな人間なので、これまでのライブの半分くらいは付合っていただきました女性(奇特な方達です)、もしくは現嫁が「さあ、これは聴きましょうよ!」とチケットを用意してくれたのであります。
どうしようもない人間です。というか「音楽家として如何なものか?」と我ながら疑問を感じるところです。ところが一度入り込んでしまうと、どうにも止まらなくなるのが拙者のもうひとつの側面であり、本アルバムはその典型でございます。このステップスの面子にゲストとして渡辺香津美が入ったライブを同じ高校出身で当時付合っていたK子がチケットを買って来ました。彼女は別れるまでの4年間で4回くらいのライブ行きを勝手に決めて面倒臭いという僕をズルズルと引きずるように連れて行ってくれました。先ほど年月日を調べてみると1982年3月1日の厚生年金会館(新宿)、どうもこれらしいです。
今更ながら胸が熱くなる感じがします。
そのライブと本アルバムの演奏内容はほぼ同じイメージと言って良いと思います。
タイトルが変っている作品もあるようですが、このアルバム自体もライブアルバムであり、自分の心に刻まれた音と不思議なほど重なり、音楽というものが時を超えて訴えて来る美しさに改めて敬服するものです。
このメンバーの中で、今も敬愛するピアニスト・作曲家のドン・グロルニック、そしてテナーサックスのマイケル・ブレッカーは既に故人となられ今は天国にてセッションしていることと思われます。残念なことではありますが、しかしこのアルバムにおいては正に現在進行形で音として生きており、その演奏のあまりの神々しさに心打たれます。頑迷なジャズファンの多い世界で、これは問題発言の恐れあり(笑)と思われますが、ステップス以前・以降でジャズが分かれるとすら僕は思います。それはクラシック音楽において新古典派と言われるバルトークの立ち位置にも似たところを感じます。
振幅を大きくとり、少しくらいの引っかかりやミスは大らかに考え、それを味として消化してしまう従来の(それはそれで否定しないものですが)ジャズとは明らかに違う。音楽は煮詰められており、それはドラム、ベースの低域担当であっても例外ではない。この音楽内容を具現化出来るベーシストと言えば当時、エディ・ゴメス以外では考えられないところだったと思いますし、またスティーブ・ガッドにご遠慮願って、ピーター・アースキンに交代したのもバンドの深化にとっては、どうしても必要な流れであったと言えるでしょう。ガッドのドラムは嫌いじゃないしチックコリアの「妖精」辺りでの彼はやはり素晴らしい。しかし、ステップスにおいて彼のドラムではどこか平坦でバンドのスケールアップに歯止めをかけてしまう。あるファンによっては「ガッドはスィングしていないから」とコメントするが、そういう形容もありか。バンドにおいて如何にドラムが全体イメージを決定するのか!ということを雄弁に語っている例がこのステップスにおいても体現していると言うことになりましょうか。何度も聴いて行くと、これがジャズという形体を借りた、ジャンル不明なコンテンポラリーミュージックという体を成している気がしてまいります。例えばドン・グロルニックのソロや作品に対するアプローチはとてもジャズだけでは説明が付かない。作品はこのユニットを率いたヴィブラフォンのマイク・マイニエリが書くことが圧倒的に多いですが、本作ではドングロルニックがM1、M4を書いており、これが親方に負けずに出来が良い。担当楽器の性質から来るものなのか、ドン・グロルニック作品の方が若干叙情的な雰囲気が強いように思います。余談になりますが、ライブ当時ピーター・アースキンのヘアはまだ若干残っておりまして(笑)、撫で付けた髪の毛がライブ後半になるにつれて逆立って訳の分からないカオス状態になって行ったのが愛嬌でありました。このアルバムは僕にとって単なるお気に入りの作品を通り越しており、クラシック流な形容をすれば、自分にとっての「聖書みたいなもの」に近い存在です。聴いていると、この音楽からスキルを吸い上げたい!という出来の悪いポンプが作動するわけです。そしてコレと言って面白い音楽が見つからない時、本作があるではないか!と言うことになります。出来ればこのメンバー構成でスタジオ版を1枚リリースして欲しかったという気がします。この後改名した「ステップスアヘッド」も決して悪くないですが、このパラドックスのステップスを"イチオシ"としたいと思います。STEPSというとどうしてもK子の姿が浮かんできます。時が止まっており、若いままなのが嬉しいのか悲しいのかハッキリしませんけれど。でもこれって音楽のイイところかも知れませんね。今の彼女が幸せでありますように、、、ということで本日は筆を置きます。