ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

上原ひろみ・Alive - ようやく聴いてみる!

このリズムセクションの訴求力。

サイモン・フィリップスアンソニー・ジャクソンリズムセクションということで本作を手にした音楽ファンも多いかと思う。
僕もその一人かも知れない。
Youtubeで視て(聴いて)アルバムを買っちゃった!」というケースは少なくないが、これもまた例外ではなく。
しかし、キッカケとなったYoutubeの作品は入っていなかったようです。そこは少し残念。上原ひろみさんは同業者です。同じピアニストであり作曲家なのだけれど、これまで何故か避けて聴かなかった。しかし、食わず嫌いは自分の悪い癖です。ということで、ようやく聴いてみました。他アーティストの影響が微妙に感じ取れるところが面白いです。これは僕個人の感じ方かも知れないですが、不思議とプログレ色の混入?ありです。ELPであるとか、ザッパのような文法も入り込んでいる。ジャズピアニストとしては異例に変拍子が多く、それは彼女自前のフィルターを通して消化吸収し独特なフレーズにより創出されている。好感度が高いですね。サイモン・フィリップスは随分若い頃から耳にしておりますが、基本線は変らない。一聴すると引き出しの多い多彩なイメージで来るけれど、全体像を眺めるとパターンはハッキリしており意外に明快で分かりやすいドラムだと思う。サウンド的にはジョジョメイヤーのような細身な(彼は身体もえらく細身だが、、笑)音を好む僕としては若干違う音だけれど、これはこれで"タイコ"らしい音で悪くないと思う。ニュートラルなイイ音だ。サイモン・フィリップスは、群雄割拠するテクニカルなドラマーの中でも知的なイメージのする人です。実際、リズムの組み立ては練られており、ドラムの作曲と言ったスタンスでしょうか。鍵盤サイドからは好まれそうなドラマーではないだろうか。何となくこうなっちゃいました!というところが少ない、学究肌なところも強み。本作の相方ベーシストは、アンソニー・ジャクソンだが、これまた楽器が違うものの似たタイプと言える。このリズムセクション上原ひろみの組合せは、面子の面白さで決定されているというよりは、彼女が今、やりたい音楽の内容から呼ばれた二人という気がする。

音楽内容もまた、呆れるほど濃くて全体を聴くと腹一杯になるのであるが、僕は天の邪鬼なのでこんなには曲数は要らない。ブルース進行、つまりは7thコードでガチャガチャとソロを弾き倒すのはアメリカのライブシーンにおいては(まあ国内も似たり寄ったりか?)受けるのであろうが、僕はそういうのは辟易としてしまう。このアルバムからそれらを削ると、よりタイトでスッキリとした形。このリズム隊である必然性がより明確となり、聴く側へ向うパワーはずっと高まるはず。テーマの旋律、ハーモニーに素敵なセンスが沢山入っており、上原ひろみの人気の一旦がこの辺にあることが分かって来る。テクニックを聴かせることが悪いのではない。音楽内容に対する感心は多様であり、原理的にこう聴くべき、、という考え方は違っているように思う。ただ、本作の冒頭からの高い音楽性に耳が行くと「徹頭徹尾、こういう現代的なアプローチで通して欲しかった」というのが僕個人の見解です。
(本作をテーマとブリッジに絞り込むと、未だ尊敬する「る*しろう」(但し、かなり以前にリリースされた1stアルバムの頃)みたいになっちゃうのは見えている。それもまたちょっと違うだろうし。音楽造りの難しいところかも知れません。)

ジャケの帯にはこの「トリオ無限大」とある。

次回作は、シンセで大きな空間を演出するとか、音数を極力削った現代的なアプローチをしていみるとか、そういった試みを期待したいと思います。
今回の僕の評は、おそらくピアニスト・作曲家という同じ立場からの、かなり偏った内容であることは確かです。
本作を聴いて「何だ、タカの言うことは充てにならんなぁ」と思っていただいて大いにOKなのです。

る*しろう:インディーズシーンにおいて絶大な人気を誇るベースレスピアノトリオ。天衣無縫な音楽性は止まるところを知らず、共演すると間違いなく突き落とされたものです。おそらくは国内よりヨーロッパ方面の評価が高いのでは?と想像されます。