ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

コレって映画音楽なのか?ー平沢進/パプリカ

平沢進に眼を向けるキッカケとなった凄い作品力!

僕の㊙音楽図書館であるM田さんからこれをお借りしたのはもう大分前のことになる。2年前くらいかな。今敏監督作品である「パプリカ」。併行して映画の「東京ゴッドファーザーズ」を借りたので、本作パプリカの映画と映画音楽をゴチャゴチャにしていた時期があります。やれやれ、今は勿論整理が付いておりますけれど。さて「パプリカ」の音楽は平沢進が担当しております。(因に"東京ゴッドファーザーズ"は鈴木慶一

では、何故に今頃になって、本作を引っ張り出したのか?
ひとつの理由として、今も時折聴いてしまう、その計り知れない魔力の存在。ふたつめは、先日お借りした「童夢」のイメージCD(童夢は映画化されておらず、そのイメージを土台にしたファン向けの音楽)を聴いたことによります。
童夢」はアニメファンなら説明不要の名作ということであり、アキラの前身にあたる、しかししてアキラにはない仄暗い魅力が感じられる力作と言えましょうか。この童夢をイメージ化した音楽というのなら、俄然興味は沸いて来るのであります。そして本日iPodに流すべくCDをカートリッジに入れて試聴をスタートと。。数分後、僕は針を上げておりました。これは駄目ですね。アレルギーを起こしたのは冒頭で入って来る打込みのリズムの音・フレーズからです。気が付くと聴く力はもう殆ど残っていない(笑)、しかし、そこはそれ。せっかくM田さんが別部署から送ってくれた"ブツ"ですから、1曲づつどんなものか?くらいは聴いて行きましたが、やはりスタート時の印象は覆らなかった。スクエアのキーボード奏者・和泉氏の音が聴ける!と喜んでいるコメントを見たりしたが、、うーん、、作曲においてコードプログレッションが稚拙なのが最も気になるところです。イメージと同化する音はサウンドに滅茶苦茶に凝るか、恐ろしくシンプルにするか、、そして現代音楽にも比肩し得る音使いを駆使するか、という鋭いアプローチ、思索が必要と思うのですが。大伴のアシスタントであった今の絵柄がどこやら似ているのは当然といえばそうなります。が、しかしその"くっ付いている音楽"となると話は別です。こちら「パプリカ」は何故に聴き続けるのか?映画音楽、たとえそれが絵のバックに置かれる音楽であっても相撲で言う「輪島と貴ノ花の大一番」(年齢がバレます、笑)のように、がっぷり四つでなければならない。BGMだからとか、音楽が邪魔しないように等というのは"いけない考え方"であり、それは本業の音楽と何ら変らない作品力が必要なのだと思う。その点、このパプリカはどうだろう? 劇場(映画館)のシーン、わけの分からない化け物達の行列が炸裂するわけだが、その時の音楽の切れ具合といったら、、。これは音楽だけを取り出しても確かに面白く、バンドでカバーするか、と考えたこともあるくらい。しかしコレは紛れもなく「映画音楽」なのだ。なぜって映画とシンクロした時のスケール感は尋常ではないから。音楽に力があるだけに、絵を押出す「圧」へと転化されて、とてつもないインパクトを生むことになる。本アルバムは普通に音楽アルバムとして聴けるものなのです。そして「こういうセンスっていいよね」となる。しかも、その後に映画でこの音楽の重なりを確認するとイイ。凄い仕事っぷりだなぁ!!!と感心して終いには呆れてしまう。音楽だけを聴く→映画で確認する→音楽だけを聴く→映画で再度確認する、このようにリピートすると何かがあぶり出されて見えて来る気がする。平沢進Pモデルの頃から知っている。でもセンスを認めても何か音を詰め込み過ぎてゴチャゴチャした印象(おそらく、もう少し聴くべきだったか、と反省はしてます。)で、どうしても音楽家としての動向は「坂本龍一」の方に注目が行っていたわけですが、この作品を聴くと、あっさり掌を返して、もっと評価されて欲しいと思うのであります。音楽の内容としては、初めての耳には音数過多でゴチャゴチャと聴こえるかも知れません。しかし、その練られた音の万華鏡に最後は押し倒されます。第一に旋律のラインに他にはない魅力が感じられます。また、音楽のタイプも色彩に富み平沢進の守備範囲が如何に広いものかが伺い知れます。映画、音楽共に保証付?オススメです!! 《本評は大幅に(笑)2回目の加筆修正しております。2019.06.12》