ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

PHRONESIS・Waiking Dark まだ続いている!

本作は4枚目となる。既に8枚のリリースとは驚きです!

4枚くらいのアルバムリリースと勝手にイメージしておりましたが、本作が4作目であり、このバンドとしては丁度折り返し地点に位置するのか!と少々意外に感じております。最新作を先に聴いて、逆に中間点に戻って聴いたのは変則的とも言えますが、まあビートルズなんかもそうだった。Let It Beが僕にとって初めてのビートルズだったから。ということで、普通に考えればこちらが洗練度や、演奏内容から物足りなかったり、差異を感じるのは否めないだろう、との推測でありましたが、これもまた良い意味で裏切られました。これはアプローチが大分異なっており、平たく言ってしまえば本作の方がよりジャズ・フュージョン方向かと思います。フュージョンと言うと誤解を受けそうな気もするわけですが、しっかりと硬派なサウンド、相変わらずの手数、音数過多な音の壁でドーンと押し倒されます。ジャズ方向というのは、最新作が作曲力というのか、作品の色合いで聴かせるところが強いのに対して、こちらは演奏そのものでストレートに勝負しているところから、そのように感じるのだと個人的に解釈しております。
構成もわかりやすくソロパートもこちらの方がより長い尺を取っているように感じられ、緊張感のあるものとなります。よって、このバンドにジャズを望むのであれば本作の方がオススメかも知れません。もしくは1stアルバムから順を追って聴くのが良いようにも思います。僕の場合、もはや手遅れではありますが(笑)
メンバーは不動で、初期の頃とドラマーが代わった以外は同じ布陣です。ドラマーのアントン・イーガーの際立ったキャラがこのバンドの演奏イメージを決定している印象を持っておりますが、この押し付けがましく?若干エグいドラムは好き嫌いがありそうなので、ここで一枚踏み絵が入るか?というところです。
最新作「We Are All」ではドラムの質感がどこか燻んだ印象があって、気になったのですが本作では悪くないです。タムからフロアタムにかけての音の出方も良いように思います。
僕がこのバンドを気に入る最たる理由はピアノにあります。このピアノの音の出し方、描くラインにとても共感を持つのです。
イーヴォ・ニーブ(ネアムという人もいる。)は最新アルバムでも紹介した通り、クラシック一・近現代音楽からジャズまで圧倒的なスキルを持っておりバンドに対する貢献度はとても高いです。根底にビル・エヴァンスが在るのは一聴して明らかですが、しっかりと咀嚼した上で取込み自分の音楽として創出しているのが分かります。全体を通すと最新作のような気になるところはなく、普通に演奏を楽しめる良作です。最新作でき気になるのは、変拍子の使い方です。これが、別に変拍子でなく普通の3拍子、4拍子でOKな部分でも無理に変拍子にしている気がします。4作目では、そうした否定的な部分は感じられず、そういうところで言えば本作の方が"好感度"は高いです。作品力としては少し前までは流石に最新作の方か?と思っておりましたが、何度も聴いていくと本作の方が曲のセンス(旋律・リズム・ハーモニー)で上回るというのが個人的な感想です。
こうして、相当な回数を聴いてまいりますと、どうしても評が細かく辛くなってしまう。このバンド、こちらを熱くさせる何かがあるのでしょう。この世に在って良かったと実感するバンドのひとつです。〈加筆修正:2019.12.27〉