ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

心の中で生き続ける-KEEPⅡ・深町純

深町さんからの手紙

思い出すと涙が出て来る。
深町純さんはこの国を代表するピアニスト・作曲家です。
昔から凄い人だった。米の強者と対等に渡り合い作品を残している。
今聴いても、それは懐古趣味などではなく現行型の音楽としてしっかり聴けるものだ。
ピアノのテクニックもそりゃ凄いが、それ以上に音楽力(作品力)に目覚しいところがある。
ここで選んだのはロックン・ロックド・ロックというKEEP時代の作品となる。
KEEPというのは、和田アキラ、富倉安生、山木秀夫と共に結成した、どちらかというプログレ寄りのジャズロック(フュージョン)ユニットだ。

ジャケを見ると一目瞭然、このユニットの2ndアルバムとなる。
バンドのイメージ通りのデザインだたお思う。青のトーンも良い感じですね。

1stと比較すると、より音楽が太く骨格がしっかりしたものに変化している。これを進化ととるよりは変化ととった方が良いかも知れない。
1stはもっと軽快でフュージョン色がもう少し強いが、これはこれで個人的に好みでもある。自分にとって何度も聴けるある意味「聴きやすい」ということは重要なポイントでもあるので。

それにしても、この押し出されている作品の色彩感はどうだろう?
例えば、同じ編成で演奏力のあるバンドと言えばカシオペアがある。シンプルな4リズムの音楽でありながら、この構築されている世界の違いには興味深いところがある。
明確に違うところは、カシオペアにはこのKEEPにあるダークなところは欠片もないというところだ。明るく雲ひとつない青空のようにカラッとしている。対してKEEPは例え晴れていても、よく見れば薄曇りであり空の低さを感じさせる。
それはKEEPが紛れもなくプログレ的な色調を帯びている、ということと無関係ではないだろう。

独特なハーモニー、リズムの重さ・アプローチはKEEPならではのものだ。まるで「湖で遊ぶモーターボート」と「大海原を行く巨大なタンカー」の違いにも似ている。それぞれ良さがあり、聴き手は、こうした重さの質、サウンドの押出、リズム隊の音と、そして何より曲が持っている方向性から好みを決めて行く。
おそらくカシオペアもKEEPもどちらも好き!と言う人はあまり居ないような気がする。両方を聴く音楽ファンも、おそらくは同じ土俵にはのせないでしょう。
生前、深町さんのサイトをよく閲覧していたものだ。コラムのページがあって、それはとても楽しく、また政治面でのことではこの方が平和を希求し、真っすぐな人だったことが行間から感じ取ることが出来た。
あの音楽から想像すると暗くて気難しいのかな?と想像しがちだが、明るく楽しく前向きな人だったに違いない。
お亡くなりになってからも、周囲がイベントを開いて、深町さんの功績を伝えるよう努力されているようです。そういったことからも、彼のお人柄、奥深い人間性が忍ばれます。余談ながら、若い頃、一度テープを聴いて欲しくて送ったことがあります。
手書きの手紙が届きました。

「川崎君、僕は君がこういう音楽をやっていること、その気持がとてもよく分かる」
そして、恵比寿で行われるライブのお誘いが入っておりました。
その当時、身体を壊していた僕はそのライブには行けませんでしたが、今思えば這ってでも行くべきだったな!と今でも後悔しています。

今度、関連したイベントがあったらお邪魔したいと思います。
僕にとって、今でも心の中で強く生き続ける偉大な音楽家です。

深町さんはNHKのドラマなど、TVの仕事もされておりましたが、そういった仕事としての音楽であって、しっかり彼の旋律を聴くことが出来ます。
何事も妥協しない。何事にも一生懸命だったのでしょう。
見習いたいと思います。                <2017.8.30 加筆・修正>