ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

ケイトブッシュ・AERIAL / 自然、ため息が出る

自分にとっては「Hands of Love」の延長線上にある?

これまでの彼女の作品の中では上記小見出「Hands of Love」が突出した存在だった。
このAERIALの存在は前々から知っていたけれど、2枚組でしょ。恥ずかしながら、作品数の多い作品はビートルズを例外としてあまり好まないタイプなので敬遠していたのです。クラシック音楽でもマーラーなんかは音楽としては素晴らしいけれど長過ぎてもうげっそり(笑)やつれてしまいます。
勝手なもので、自分が演奏する側であれば、アンコールは喜びますが、聴く側としてライブに行くと「もう帰る!」と心は既に帰宅モードに入っている。アンコールを望むのは余程なことです。もう少し聴きたいな、、と思ったのは、大昔聴いたゲルニカのライブですね。神保町の教育会館ってところでやったような記憶がある。チェロ+ピアノ+クラリネット+戸川純ですね。戸川純のMCがこれまた楽しくて、、酷い脱線なのでここまでで。
さて、、人には音楽体力ってのがある思う。肉体的な持久力とは別に。僕にはこれがが不足していると感じます。音楽容量のすごいお客さん達はライブのハシゴして喜んでアンコールしてますから。
お酒と一緒でアルバムも自分の適量があって、耳が弱いのかデカイ音で長く聴けないところがあるかも知れない。
しかし、本作はケイトブッシュでありますから、ビートルズホワイトアルバム」以来のアプローチを決めて聴いてみました。
結果は、タイトル通りであります。
これは、自分の中でのベストであった「Hands of Love」と並ぶ存在ですね。
DISK1・2とその時に応じて適当に選んで聴いておりますが、同等に力作が並んでいる印象です。
電気類を使っている方だと思いますが、ピアノにも重きがかかっており彼女はピアノが無視出来ない、というか単純に楽器として好むところなのでしょう。普段からピアノと共に音楽に向かっているのかも知れない。本作の隠れた聴きどころであるピアノの音質。これが何とも品格があり、良い仕上がりになっております。ピアノの入っているCDアルバム、ご存知の通り古今東西星の数ほどありますが、これほど自分にぴったり来る音はないな、、と。
普通に生ピを使ったのではないような、気がするのだけれど。数年前にピアノ音源としてリリースされている、スタインウェイサウンドに近いだろうか。確か、チック・コリア からライル・メイズまでレコーディング現場で使ったという名器があるのですが、その音源を思い出しました。
もしこれが生ピだったとしたら、レコーディングが鬼のように凄いということになります。
シンセやSEの使い方、カラフルなヴォイスの多用は本作の特徴ですが、特に鳥の声とヴォイスを同期させたところが面白く、もしかするとメシアンの「鳥のカタログ」を要素として取り入れたのかも知れない?などと推測して楽しくなります。
黒子に徹するシンセ類のシーケンスパターンだけを取出しても、とても凝った音と抑揚を持っており、そのパートだけを取り出して聴いても魅力的な力があるように思う。白玉で鳴らすオーケストレーションも、その出現の仕方、極美とも言える質感とキャラの立った音使いは他の類似した音楽とは一線を画しているのでは?と思います。
他作品との比較でハッキリと上を行くのがリズムセクションの音楽内容です。これはオンするときのフィルインひとつ取っても、刻みのハイハットやライドを取っても言えるところで、この辺は彼女自身のセンスなのか、関係したアーティスト、アレンジャーなのか、判断出来ない部分です。しかし、その作業を誰がやったことであれ、彼女の"確信と指示"が入っていることは間違いない、だからこそ曰く言葉にはし難い「あの世界」はいつも一貫している、ということになります。《加筆・修正 2020.10.18》