ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

串カツではない新世界!/ オケの達人・ドボルザーク

クラシックを聴かないアーティストは底が浅い?

あまりにベタシリーズというわけだ。今回はそのベタの中でも特別にベタな新世界を取り上げる。
指揮者・オーケストラはクラシックファンであれば、滅茶苦茶に拘るが、僕はとりあえず今回、若干外しつつもある程度無難なところを選択してみました。

コレなら誰が聴いてもOK。

ジャケも良い感じですね。僕は好きなタイプです。
演奏しておりますのは「カラヤン+BPO」と。BPOってのはカラヤンの手勢であるベルリンフィルのことです。因に旧東ドイツ発のベルリン交響楽団というのは別物です。アレはアレでショスタコーヴィチ等を演奏させると、それはもう素晴らしいのですが。本アルバムは、クラシック初めて!という小学生でも、クラシック歴60年という爺さんでも大丈夫。そういうセレクトではある、、、とおそらくは。あれ、、?元気がなくなって来た(笑)
クラシックファンは頑迷な音楽ファンがちょっとだけ混じっておりますので。
ドボルザークの交響曲では最後となる作品であり、人気は8番と二分する。クラシックファンは"ドボ八"と言ってヨイショするのである。
実際、8番は美しいラインを描くことにおいては9番と遜色ない。
しかし、ドボルザークの代表曲は交響曲第9番「新世界」ホ短調、で間違いないだろう。中学生時分、クラシックの中で最も聴いたのがコレだ。
冬は炬燵から顔だけを出し、眠ってしまうとまた第一楽章から針を落として、二楽章の家路で夢路へと旅立つのである。

僕は、長年バンドに関わって来たが、クラシックを聴かない音楽家は底が浅いと思っている。勿論、反論していただきたい気持ちだし(変な話)そうでないことを祈りたい。少々不思議な感覚なのですけれど。しかし今のところ、そういう見解です。
別に練習、研究など大袈裟なことは必要ない。聴くだけで良いのである。
そして、えらく気に入るパート、どうしても心の動かされるパートに拘るだけで、それは何時しか自分のどこかに刻まれ、演奏のセンスとして創出される。あの聴くだけでペラペラになる英会話とは違いまずぞっ!!
ヨーロッパのクラシック以外のジャンル、ジャズであるとかジャズロックの演奏家の描く旋律は全てではないが、これはもうクラシック聴いて来たな、、というのが分かる場合が多い。例えばECMのトーマス・モーガン(wb)なんかはその分かりやすい例だ。パッと聴きで、ブルースからジャズからという王道とは明らかに違うセンスを垣間みることが出来る。

さて本題「新世界」、そのハーモニーと旋律の繊細な関係、綿密に練られた音の重なりはクラシック音楽の中でもひとつの完成形、金字塔と言って良いだろう。また、この交響曲は規模が大きく所要時間は長いが、クラシック音楽を初めて(腰を入れて)聴くという場合にも、良い選択だと思う。
総じて分かりやすいし、聴けばすぐに誰でも「あぁ、、コレ知っている!」と膝を打つであろう「二楽章」の存在もある。
ドボルザークは確かに親しみやすく、ロシア系のショスタコーヴィチやプロコフィエフ辺りと比較すると捻りは少ないのは事実だ。が、その作品力は決して侮れない。
それは優秀な編曲技術が下地にあるからだ。新世界ではそれが分かりやすい形で結実している。
一楽章の重々しい歩みからの新世界への誘い、二楽章の他には例をみない温度・湿度感、三楽章の民族的な色合いを巧みな管楽器アレンジで聴かせる軽快なセンス、四楽章の意志を強さを感じさせる迷いを払拭したような突き抜けたアンサンブルとダサい!ということをもはや超えてしまった旋律(笑)
この作品を聴くと、自己の投影に些かの迷いがあってはならない、ということを教えられる。「こういう僕って少し恥ずかしいな、、、」新世界にはそういう虚弱体質なところが見当たらない。言うなれば樹齢数百年の銘木の様なものだろうか。
とにかく交響曲という形体を十二分に使って、新世界(つまりはドボルザークが見た当時の紛れもないアメリカ大陸というもの)を表現し尽くしているのである。
もしこの演奏で新世界を気に入ったのなら先々、様々な演奏家で聴かれると楽しいです。クラシックは作曲家にもよりますが、演奏家によって驚く程音楽が変ります。それは指揮者の解釈やテンポ感というところが大きいと思いますが、オーケストラの持つサウンドもまたお国柄が出て違って来ます。この指揮者+オーケストラというところでクラシックファンは右往左往しているわけです。また、それが楽しいわけですよ。本作もその土俵に上がることの多い作品です。本来ならチェコ出身の作曲家ですので、ハマり具合としては「ノイマン+チェコフィル」ってところなのかも知れませんが、若干外した選択を行いました。クラシック入門にピッタリな作品は他にも沢山ございます。これから折に触れて紹介して行きたいと思います。