〈 g e n r e 〉

ELP「タルカス」/いつも心に置いておきたい

キース・エマーソン亡きこの世!

キース・エマーソンもグレグ・レイクも故人であることが未だ信じられない自分です。

僕が「ELP」に初めて触れたのは高校時代、1stアルバムだった。

その後、彼らとしては評価の上がらない3作目の「トリロジー」を聴いたのだが、何故か名作である本作は後回しになってしまった。

理由は分からない。

皆があまりにタルカスが凄いと騒ぐものだから、根っから天の邪鬼な僕はわざと飛ばしたのかも知れない。

しかしながら、結果は皆と手をつないで「タルカス集合体」に入るのであります(笑)

余談になりますが、高校時代の僕はチック・コリアキース・エマーソンをゴチャゴチャにしており、当時のNHK/FM「朝のリズム」という音楽番組で流れていたチックの「妖精」をELPと思い込んで「ELPも随分ジャズ的なアプローチをするものだ、、!」と感心しておりました。この件は、チックコリア「妖精」のページで確か触れておりまして、僕の中では未だにチックとキースの近似性というのは根強いのです。それは懐かしさの手伝った曲がった解釈というものです。この二人は確かに近づいた時代はありましたが、持っている音楽の根幹は違うところに在ると言った方が正しい見方かも知れません。

 

昨晩、久しぶりに会社の帰り道愛用iPodでこの大作である1曲目を聴いてみました。

驚くべきは自分の中でイメージが劣化していない真空パック状態であることです。

それどころか新しい魅力を感じる程でした。そしてその魅力とは果たしてどのようなものなのか?ということになります。

まず、ELPと言えばキース・エマーソンの超人的なキーボードパフォーマンスが重要なポイントとなります。確かにそうだ!

けれども、、、。

音楽ファンも音楽評論家も皆、その超人的な演奏で説明を終わらせる傾向がある。

勿論、グレグ・レイクのヴォーカル(因に僕は彼のヴォーカルがとても好みではあります。)、カール・パーマーの手数ドラムを追加するのは、これまた必須事項。

しかし、こうしたメカニカルなサーカス芸的な扱いで終始するのは個人的に好まない。ELPのどこを愛するのか、これは意外に振り幅が大きいのかも知れない。

僕だって、長き時間の中でポイントが変化して来たような気がする。

それは、キース・エマーソンの作曲内容により重点が傾いて来たということだと思う。

オルガンで弾かれるパートで、顕著にその音楽的要素を垣間みることが出来るが、

この独特な天然カラーをゴチャゴチャにミックスしたような不思議な世界観は彼のどこから来るのか。

それは、彼の表現したかったヴィジョンと、作曲スキルの混然一体となった結果ではないかと想像されます。それは彼の生い立ちから、見聞を通して拘っていた曰く言葉にはし難い何かだと思うのですが、、それをハッキリしては音楽は音楽ではなくなる!という気もします。

作曲の前段階にある絵柄、心の動きはどのようなものだったのだろうか?興味深くはあるのですが。

特に本作タルカスでは、そのイメージは強く分かりやすい形で創出されているのは間違いないところでしょう。

キーボードパフォーマンスにおいては、クラシック音楽の起点とも言うべきバッハと、進行形である現代音楽という両端を取り入れていることは確かですが、しかし現代音楽と言っても、除外されるものも多いと思う。

本人も言っているので、これは確かだと思うけれど、アメリカを代表するコープランドの影響はあるみたいです。しかし、コープランドを聴いても直接的な影響というのは僕には分からない。むしろ、バルトークとヨーロッパ各地の民族音楽の色合いを感じるところがあり、この辺は断言出来ないです。

まあ、こういうところをやたらと追求する暇があるのなら自分でコピーし演奏した方が良さそうですが、僕はそれは絶対にやらない!!と思います。

ELPは一人の聴き手として接したい。これを自分の音楽に引き入れると半端じゃない影響を被り自分の音楽を失う恐さがあるからです。

ただでさえ僕はELP病予備軍」の一員であることを認めなければなりません。

自分の音楽を聴くと、あちらこちらにキースの音楽から得たフレーズが散らかっております。それはライブの聴き手が鬼聴すれば「もしかしたら気が付く?」というレベルのものですが。

ネタバレをしてしまいますと、タルカスで聴かれる4拍子系の中で急速に早い3拍子系を捩じ込むようなところです。

この3拍子をキース・エマーソンマルチトニックシステムという、全てが主和音という連鎖(通常のコードプログレッションとは全く異なる進行)を採用して弾いているわけです。

これを「是非自分もこのように、、、」と思って作為的に使用したわけではないのです。何時の間にか自分の脳のどこかに巣食っていて、別な形で無意識に使っていたということになり、大分時間を経過してタルカスを聴いて「あぁ、、やっちまった!」と気が付いたのでした(笑)。そういうことで「ELPの感染力の強さには呆れてしまう」ということになるのでした。まあ、、一種の猛毒ですよね。

まだ、この旋律の謎は解明出来ませんが、しかしたまには不思議であることが、そのままの状態で続くのも素敵な事ではないか?と思うのです。

僕にとってELPはイメージの世界を旅する"新型の乗物"みたいなものです。

色あせることのない、今迄も、これからも心に置かれる音楽です。