ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

ELP「タルカス」/いつも心に置いておきたい

キース・エマーソン亡きこの世!

キース・エマーソンもグレグ・レイクも故人であることが未だ信じられない自分です。僕が「ELP」に初めて触れたのは高校時代、1stアルバムだった。
その後、彼らとしては少し地味な存在とも言える3作目の「トリロジー」(内容は決して悪くない。今聴くといぶし銀のような存在かも)を聴いたのだが、何故か名作である本作は後回しになってしまった。
理由は分からない。
皆があまりにタルカスが凄いと騒ぐものだから、根っから天の邪鬼な僕はわざと飛ばしたのかも知れない。
しかしながら、結果は皆と手をつないで「タルカス集合体」に入るのであります(笑)

余談になりますが、高校時代の僕はチック・コリアキース・エマーソンをゴチャゴチャにしており、当時のNHK/FM「朝のリズム」という音楽番組で流れていたチックの「妖精」をELPと思い込んで「ELPも随分ジャズ的なアプローチをするものだ、、!」と感心しておりました。この件は、チックコリア「妖精」のページで確か触れておりまして、僕の中では未だにチックとキースの近似性というのは根強いのです。それは懐かしさの手伝った曲がった解釈というものです。この二人は確かに近づいた時代はありましたが、持っている音楽の根幹は違うところに在ると言った方が正しい見方かも知れません。

昨晩、久しぶりに会社の帰り道愛用iPodでこの大作である1曲目を聴いてみました。
驚くべきは自分の中でイメージが劣化していない真空パック状態であることです。
それどころか新しい魅力を感じる程でした。そしてその魅力とは果たしてどのようなものなのか?ということになります。

まず、ELPと言えばキース・エマーソンの超人的なキーボードパフォーマンスが重要なポイントとなります。そりゃまぁ、、確かにそうですよね!
けれども、、、。
音楽ファンも音楽評論家も、その超人的な演奏で評を終始させる傾向がある。勿論、グレグ・レイクのヴォーカル(因に僕は彼のヴォーカルがとても好みではあります。)、カール・パーマーの手数ドラムを追加するのは、これまた必須事項。しかし、こうしたメカニカルなサーカス芸的な扱いで終始するのは個人的に好まないのであります。ELPのどこを愛するのか、これは意外に振り幅が大きいのかも知れない。
僕だって、長き時間の中でポイントが変化して来たような気がする。
最近は、特にキース・エマーソンの作曲内容に重点が傾いて来たということだと思います。オルガンで弾かれるパートで顕著にですが、この独特な天然カラーをゴチャゴチャにミックスしたような不思議な世界観は彼のどこから来るのでしょうか。

それは、彼の表現したかったヴィジョンと、作曲スキルの混然一体となった結果ではないかと想像されます。それは彼の生い立ち、そして見聞を通して拘っていた曰く言葉にはし難い何かだと思うのですが、、それをハッキリしては音楽は音楽ではなくなる!という気もします。
作曲の前段階にある絵柄、心の動きはどのようなものだったのだろうか?興味深くはあるのですが。特に本作タルカスでは、そのイメージは強く分かりやすい形で創出されているのは間違いないところでしょう。
キーボードパフォーマンスにおいては、クラシック音楽の起点とも言うべきバッハと、進行形である現代音楽という両端を取り入れていることは確かですが、しかし現代音楽と言っても、除外されるものも多いと思う。
本人も言っているので、これは確かだと思うけれど、アメリカを代表するコープランドの影響はあるみたいです。このコープランドの影響というのが僕には分からなかった。しかし昨晩"Eテレ"で聴いたデトロイト交響楽団で聴いた交響曲3番、これで、ようやく「あっ、、なるほど!!」と膝を打ったわけです。特に分かりやすいのは4楽章のファンファーレ・パート(これは「庶民のファンファーレ」と呼ばれるものです。)

まるでELPの作品をオケが演奏しているような錯覚に陥りました。しかし、このコープランドからの影響と言っても、どのような流れで自分のセンスに取り込んだのかは不明です。楽譜とレコードで研究したのか、好きで聴いているうちに自然な形で感性に入り込んだのか。おそらくは後者ではないか?と思うのですが。
まあ、こういうところを追求する暇があるのなら自分でコピーし演奏した方が良さそうですが、僕はそれは絶対にやらない!!と思います。
ELPは一人の聴き手として接したい。これを自分の音楽に引き入れると半端じゃない影響を被り自分の音楽を失う恐さがあるからです。
ただでさえ僕はELP病予備軍」の一員であることを認めなければなりません。
自分の音楽を聴くと、あちらこちらにキースの音楽から得たフレーズが散らかっております。それはライブの聴き手が鬼聴すれば「もしかしたら気が付く?」というレベルのものですが。
ネタバレをしてしまいますと、タルカスのテーマは基本5拍子です。僕が最も好きな変拍子ですが、そこに唐突に早い3拍子系(もしくは3連符)を捩じ込むようなところです。
この3拍子をキース・エマーソンマルチトニックシステムという、全てが主和音という連鎖(通常のコードプログレッションとは全く異なる進行)を採用して弾いているわけです。
そして僕の場合、上記テクニックを「是非自分もこのように、、、」と思って作為的に使用したわけではないのです。何時の間にか自分の脳のどこかに巣食っていて、別な形で無意識に使っていたということになり、大分時間を経過してタルカスを聴いて「あぁ、、やっちまった!」と気が付いたのでした(笑)。そういうことで「ELPの感染力の強さには呆れてしまう」ということになるのでした。まあ、、一種の猛毒ですよね。まだ、この旋律の謎は解明出来ませんが、しかしたまには不思議であることが、そのままの状態で続くのも素敵な事ではないか?と思うのです。
僕にとってELPはイメージの世界を旅する"新型の乗物"みたいなものです。
決して色褪せることのない、この先ずっと心に置かれる音楽です。
〈加筆・修正 2017.9.11〉