ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

Mats & Morgan / 北欧を代表する変態ユニット

凄過ぎて、そろそろ隠居するか?という気分になってしまう。

ということで、かつて自己顕示欲の針が振り切れてメーターから飛び出していた僕でしたが、情けない有様なのであります。世界は広く深い。様々な化け物がウヨウヨしているのでした。
ただの手数王ではない手数王「Morgan Agren」と天才に奇才を掛け合わせた全盲のキーボーディストMats Obergから成るバンド。
本作はデビューアルバムとなる。
1996年だから随分前になるが、ドラムの演奏内容などは最近のものの方がより洗練されていることは確か。
しかし、より無駄を省きソリッドになった新しいものからすると、この「気の赴くまま突っ込みました!」状態の本作は、ゴチャゴチャとしてはいるものの、その毒性はずっと強い。

キングコブラ100匹分くらいか?

全体としてキーボードを主体としたサウンドで、一辺倒になりがちなサウンドを聴いたこともない妙なフレーズのオンパレードで回避している。
これは、僕の好みということになるのだけれど「ギターを中心としたサウンド」の方がよりアルバム全体を飽きることなく聴くことが出来る場合が多い。シンセやピアノで空間を埋められると息苦しくなってしまう。
そこで、現在僕が好きなバンドは現在では殆どECM・ギタリスト関連です。
この北欧出身の化け物バンドは例外ということになりましょうか。それと忘れちゃいけない「ELP」と。おっと更に「クラフトワーク」を入れておかないと、、、、。

うん?何だ!鍵盤だって頑張ってるじゃないか。

さて、今回脱線がひどいですな。列車(自分のこと)をレールに乗せるとしましょう。
本作、触れる回数を重ねて行くと、自分自身の音楽のつまらなさに呆然とするわけです。そしてモチベーションメーターの針がレッドゾーン示すと(イメージ:キングクリムゾン「RED」裏ジャケ)。
それほどに、クラシックから現代音楽からジャズまでボーダーレスに無邪気にちゃっかりと使い倒しております。一体どうしてこれほどの吸収力と創出するだけの力を持ち得たのでしょうか?
それはMatsの「心」にこそ秘密があると思う。テクニックは結果として在るだけで、それよりも起点となっている色鮮やかな小映画みたいなモノが感じられる。それを音に転化するフィルターの性能が素晴らしいと思うわけです。
そのフレーズの突っ込み具合は恐ろしくなるほどで、これを四六時中聴いたらまず間違いなく自分の音楽性に影響が出るのは確かだと思う。
つまり、音楽家が聴くというよりは「音楽ファンの宝物」のようなものではないだろうか。元々はザッパのコピーバンドという成立ちだから聴いてすぐにザッパカラーに気が付く。
ザッパに深く傾倒し、それが音楽性に色濃く出ているバンドというのは国内外問わず少なくない。ザッパは中毒性があり、あの変則的なリズムの割り方とフレーズの音使いは、どうしても一度は真似をしたくなるのである。
しかし、オリジナルを真似ることはそれを超えられないことを意味する。賢い聴き手は最初は飛びついても「それならザッパを聴けば良いじゃん!」と早晩気付くのである。

昔、ポストユーミンは確かに存在したのである。しかしそれなら例え歌が下手であってもユーミンを聴いた方が良いのである。
そういうことなので、本作も時折(ザッパ臭が強過ぎて)、閉口する部分がないこともない。
しかし、1stアルバムでありながら彼らだからこそ成し得たザッパとは違う、もっと異質なイメージもまた同居しているのも確か。
本作は言うなれば、甘ったるいマシュマロのような音楽だ。そして、何故だろう?先ほど歩きながら聴いていると、万華鏡の様にクルクルと回っている判然としないイメージ(アメリカ版のアニメのようでもある。スーパーマンやバッドマンがニヤリと笑って、自分のことをジッと見ているような)が脳裏を過る。
そう、このユニットの特長は他のプログレとは一線を隔ててシリアスではないのである。どこかスポンジのように柔らかく、例えて言うなら温暖な瀬戸内地方のような音楽である。
それでいて、頭がおかしいのじゃないか?(褒め言葉です。)という程のテクニックというところが面白く、また同時に狂気を感じるところだろうか。
そういえば、Matsはキーボードを弾いている時に、楽しそうに回り出すことがある。
あれが心に残っていてシンクロするのかも知れない。
ひとつ言えば、この中に陰影の深いピアノ曲を短く入れたら良かったのに、、と思う。それをアルバムのヘソにあたる中心に置けば、少しやり過ぎなとっちらかった音楽に中心が与えられてスッキリとした聴きやすいものになったような気もする。
あまりに凄過ぎる音楽は、作品のどこかで、一旦聴き手を解放してあげた方が良いと思う。でないとゲッソリと疲れてしまい、せっかく面白い音楽でありながら昔の言葉で言う「針が擦り切れるほど聴く」という音楽家にとって「お客様は神様です」的な状況には成り難いと思うのです。
こういう音楽はたまに聴くところで良いのかも知れませんが、、、、。

「お前は年を重ねて、聴く力が衰えているのではないか?」と言われれば返す言葉もございません(笑)
これはもう、マニア達の音楽力を計る踏絵みたいなものかも?