ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

ウルトラQ〈サウンドトラック〉ケムール星人とパトカー

高度経済成長期、子供達の興味は対象は野球と怪獣!

分かりやすい時代。父親達は猛烈に働き、子供達のヒーローはONと怪獣だった。
さあ、遂に来ましたね。僕の世代でウルトラシリーズを素通りした人はいないでしょう。朝登校時、話題の中心は昨晩登場した怪獣のことでした。ウルトラマンがゼットンに敗れた時のショックは大変なものでした。この世に「絶対」ということはないのだ、と教えられたわけですね。

本作は個人的にとても思い入れの強いあのウルトラQサウンドトラックです。

ウルトラマン生誕40周年記念 ウルトラサウンド殿堂シリーズ(1) ウルトラQ

ウルトラQの音楽、テーマは「ビッグバンドジャズ」、BGMは「変態近・現代音楽」でしょう。

グロテテスクで気味の悪い宇宙星人や怪獣達とイメージがピッタリ。この音楽は宮内國郎さんで、元々はトランペットをやっておりジャズ方面の人だったようです。病気で断念し作曲に進んだわけですが、そういった音楽のバックボーンが音によく出ていると思います。
徹底して子供向けの怪獣映画を担当しております。「怪獣ブースカ」なんかもこの人ですね。

▲ジャケの宇宙人はケムール星人です。これはパトカーに追いかけられているシーンですね。ケムール星人は足が速いのが特長です。パトカーもなかなか追いつけません(笑)

 

子供向けだからと言って手を抜かない。本気印の内容。

テーマ音楽もイイですが、劇中音楽もまた捨て難い。大袈裟な雰囲気に思わず笑顔になっちゃいますが、同じ怪獣映画の伊福部昭(ゴジラのテーマ曲で有名ですね)とは少し違いますね。おそらく映画とTVの違いがそのまま音楽の違いになっている部分もありそうです。

テーマ音楽で比較すると宮内さんの方が、ずっとバタ臭いです。それはジャズの要素がかなり強いからです。このジャズのサウンドが不思議にウルトラQと合うのですね。対して伊福部さんの音楽は管弦楽作品と同じ流れにあり、和的で仄暗く重苦しい。どちらもBGMにしておくのが勿体ないほどのオリジナリティです。だからこそ、お二人ともに、サウンドトラックがリリースされるわけですが。
動画に合わせる音楽というのは、本当に面白い。僕も一時携わった時期があるのですが、一生の仕事にしたいくらいの楽しさがありました。また監督さんはじめスタッフさんも気さくな人が多くて、驚くべき小額の制作費を抜かせば(笑)素晴らしい仕事と言えました。


さて、この宮内さんは続くウルトラシリーズである「ウルトラマン」も担当されました。この音楽もまた素晴らしい。ジャズから一転して少年少女合唱団を使った明るいタッチのテーマですが、リズムセクションはロックンロールしております(笑)
そして、これまた一環してウルトラマンとイメージがドンピシャで、昨今の事務所絡みで使われる番組のつまらない音楽とは正反対ということになります。

例えば忍者漫画は昔はカムイ伝、今(少し前に終わりましたが)は「ナルト」です。「ナルト」は漫画で読めば問題ないですが、TVはあのテーマ音楽がいただけない。全く本編のイメージとは関係がないからです。子供番組であっても妥協せず、もう少し作品本意で番組を制作していただきたいと思います。この辺は、日本も中国も韓国もよく似ている。仲が悪いくせに似ている。あまりに似ているから仲が悪いのか?

TVの衰退はこういったところにもあるのでしょう。
僕の時代、つまりは高度経済成長期は大人達が子供番組に本気で取り組んだくれた良き時代でした。ウルトラシリーズはこうした理由からか(制作サイドが熱くなり過ぎて)遠慮なく難しい言葉が出て来ます。でも、それで良かったのです。興味を持った少年は図鑑で調べたり、理科の先生に聞いたことでしょう。「古川聡さんがウルトラセブンの影響から宇宙飛行士を目指した」というエピソードはあまりにも有名です。
こういった作品がデジタルマスタリングで復活しているのは、今の若い人達にも知ってもらうきっかけになるのでとても有意義なことだと思います。

因に「ウルトラQ」で好きだったのは「東京氷河期」「ペギラが来た」ですね。次が「ガラ玉」かな。