ピアニスト・タカの脱線CD評

FLAT122キーボードとして活躍・ピアニスト・タカ音楽評

ギター+ピアノの難しさ/ジョン・アバークロンビー

John Abercrombie Quartet / Acade

 私事ながらギタリストと8年程音楽を共にした経験があります。

アルバムも2枚リリースしましたから、それなりに結果を出したのですが、それには次の要素があったからです。ベースレスだっためピアノの左でその役割を担当することとなったし、白紙からそういう音楽であるという現代的な音楽内容を持っていたと。「ジャズやロックから来る既成概念というものを出来るだけ排除したということにより、ギターとピアノという決して相性のよくない組合せでもそれを逆手に取ることが可能となった」と、冷静に振り返ることが出来ます。しかし、もし通常のベース在りのユニットであるとすると、、、。

ギターとピアノの相性というのが実は難しいのです。

長く活動し、またセールス的に成功した例は少ないはずです。

知られているところではパットメセニーグループくらいでしょうか。

例えば、ヴォーカルが中心位置にいて、その脇をリードギターが固める。そしてキーボードは音楽に厚みを付けるというようなロック/プログレのユニットであれば、その役割がピラミッド的に配置され聴き手の耳にも心地よく届きます。

しかし、ジャズのように楽器同士が対等な立場からぶつかり合うアンサンブルにおいては、ギターのハーモニーとピアノのハーモニーがガチャガチャしてうるさく感じられる状態になりがちです。

パットメセニーグループのライルメイズはシンセサイザーでアプローチする比重も大きく、またピアノのプレイも意識的なメリハリがあるので、そういったネガを回避していると思います。

本作は、サウンドとしてはメセニーと似たところがあります。というよりメセニーの方が影響を受けたのか。編成とメンバー構成からも予想がつくのですが、何よりポイントはジョンアバーの奏でる音色です。

ひとつの潮流と言って良い音色自体は美しいものであり、流麗な音楽の重要な要素となっております。

ただ本作の場合、僕の聴くベクトル方向は、リッチー・バイラークのアプローチとなります。この人のピアノはバックに回っていても存在が強いです。手癖で適当に持って行くタイプの多いジャズピアニストの中では違うところに立っている人だと思います。

両手で素早い駆け上がりをみせるところなど、クラシック音楽を本格的にやった跡が感じられます。ロックからだけ、ジャズからだけ、ポップスからだけ、、音楽家(特に演奏家として勝負をかけるのであれば)は単一的なバックボーンではその奏でる音楽内容がハッキリって寒過ぎるのです。

また、このバンドの音をより堪能したいのであれば、音を出来るだけ正確に抽出する、オーディオが必要かもしれない。

あーぁ、大口径のJBLで聴きたいなと、、(笑)

もしくは、そこまで大袈裟ではなくても、ヘッドホンやイヤホンにそこそこな性能な機種の用意があると聴き手の印象は変って来る可能性があります。

僕が今、試聴しているのはコンピュータ直差しでオーディオテクニカのヘッドホンM40xですが、これはモニターヘッドホンで間違いなく正確な音取りを可能とする機種です。つまり限りなく味付けというものを排した本機で聴いたところで本ブログも書くようにしています。ただ、このアルバムのようなECM中心選手の力作ですと良きスピーカで聴きたくなるのは仕方ないです。

フレーズの妙というのか、他ではなかなか出て来ないラインが描かれるところがあり、おそらく幾度か接するうちに評価の内容も変って来るかも知れません。

今朝からまた聴きなおしておりますが、既に随分印象が変って来ました。自分の鈍い感性がこのギター+ピアノの難しいところを受止め始めたらしい。更に先に、音楽の深い海に潜水しつつあるのが感じられます。

ギター+ピアノの難しさ、これは本作ECMの巨匠達はやはりというべきか、理解していたようです。繊細な耳と感性、磨き抜かれたセンスでまるで強風をさらさらと逃して行く柳の木のように涼し気に進んで行きます。

彼ら程の強者にしても、収録はキツかったのかもしれない。しかし素晴らしい旋律、ハーモニーを駆使して完成に辿りついているところが感動的です。

 

同じくECMのギタリスト、ヤコブ・ブロとの違いは興味深い。比較すれば本作はずっとジャズ方向にシフトしており、もう少し本流のところでジャズを感じつつ美しい音を耳にしたい音楽ファンには薦められる内容です。

例によってジャケットは秀逸です。一度「ECMジャケット展」とでも銘打って美術展でもやったらどう?と真剣に思ったりしますが、そのECMジャケット群の中にあっても際立つところがあります。ジョンアバークロンビーには、他に多数の作品がありますが、このECMの中心線に位置するギタリストの作品に関しましては、先々もう一度ここで触れてみたいと思います。