ピアニスト・タカの脱線CD評

筆者はFLAT1-22・天然キーボード奏者の脱線転覆の珍説が脈絡なく展開!

DUST・Ben Monder「最近ギターはコレ一択!」

自分としては、相当なお気に入りらしい!!

ベン・モンダーはニューヨークのギタリスト。キャッチフレーズは「高速アルペジョ」高速をたまに「光速」と書く人もいるがイメージとしてはこちらも近いかところがある。ベン・モンダーの前はヤコブブロというECMのギタリスト一択だったが、傑作「Amorpher」に触れてからは徐々にこちらに傾倒してしまった。どちらも浮游したところがあって、キャラは共通している部分もあるが、BM(面倒なので略称)の方が、カッチリとしている。旋律のラインを気にするのであれば、ヤコブブロの方がより分かりやすいかも知れない。しかし、何度も聴いていくと音使いの深さ、考え抜かれたハーモニーではこちらに軍配が上がるか。それほどに、このギタリストの構築する音楽は緻密で、他にはない独特な世界観があるように思う。音楽はイメージ表現の一つのツールであるけれど、それを具現化しているアーティストは多くはない。
例えば、ピアニストのブラッド・メルドー
彼は時折ビートルズのカバーを取り入れる。僕が昨日聴いていたアルバムには、ビートルズの、紛れも無い傑作の一枚であろう「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Bandから「she's leaving home」にアプローチしている。この曲を「地味な作品」とかこの「アルバムの中では箸休め」とするコメントもあるけれど、バカ言っちゃいけない!(怒)「もっとしっかり聴いてくださいな!」という事になる。マエストロ・レナード・バーンスティンが「バッハのフーガに匹敵する美しさ」と驚いたように、ビートルズの中にあっても際立った美しさを持つ作品と思います。

聴いていくと、ハーモニーの組み立て・音の使い方に首を傾げるシーンがあります。これはオリジナルの美しさを損ねているように個人的には感じられます。演奏が拙くても、オリジナルの通りのコード進行を素朴に演奏した方がどれだけよかったか?と。演奏家は自分のテクニックのことから、あまりに専門的となり、時に傲慢なアプローチをすることがある。自戒を込めて思うのだけれど、謙虚に自分の出している音に耳を傾けることが、とても大切。BMがビートルズのカバーをやるというのは、あまり考えられない。が、もし弾くことになれば「武満徹のギター曲・Yesterday(ビートルズ)」くらいの深い追込みを行うに違いない。武満渾身のこの作品だって、鬼聴きすれば微かに?なところがあるのだ。本作は彼としては旧作になるが、現在進行形の音楽、新作と言われても全く不自然ではない。演奏はシンプルで「Amorpher」のようなシンセを取り入れて凝ったサウンドを作り上げた作風とは全く異なる。あちらの神々しい表現センスも凄いが、本作のスペースが空いて、カラカラとしたサウンドもまたとても魅力的に感じる。というかBMの本当のギタリストとしての魅力ということであれば、本作の方になるか。

演奏のポイントとしては、ドラムのアプローチ、リズムセンスとダイナミクスの角度の付け方が秀逸であり、このアルバムは「このリズムあってこそ」という気がする。ベースの存在が足りていないのが唯一弱点かも知れない。個人的な好みとして、フロネシスジャズパー・ホイビーまで行かなくてももっとバチーン、と切れ込むような鋭さ、フレーズの強さが欲しい。ギターがあれだけ面倒で緻密なことで音を埋めているのでアプローチが大変なことは分かるけれど。MBの一つの課題として(という言い方も生意気ではありますが)ベースをユニットに入れる以上、存在の強さ、もっと大きな必然性を感じさせる方向付けがあって良いと思います。とても自我の強そうなアーティストさんなので、サウンドとしてギターの近い位置にいるベースにギターで構築している世界を阻害されたくない、、と言う気持ちがあるのかも。

早速愛用のiPodに音を流し込み、夕暮れ時駅前の西友にバナナとコーヒーを買いに行ったのだけれど、それは映画の中を歩いているような気持ちの良いウォーキングとなりました。本作はまだまだ聴く回数が足りていないので、今年の試聴回数"ダントツ1位"に輝いている「フロネシス」(別ページに評があります。)を抜けるかどうか?興味深いところです。聴き所満載のアルバムなので、間違いなく加筆修正するでしょう。BMの場合は聴く度に新しい発見があり、どうしても文章を見直す必要が出て来るわけです。元々が拙文なわけで、多くの修正を施しつつ情報を追加していくわけです。言い訳がましいところですが、暖かな目で見守っていただければ助かります。(加筆修正・2019.10.19)